太陽光発電の売電価格（買取価格）の推移

太陽光発電で作った電気を電力会社に売ることを「売電」と言います。売電の金額は電力を売る量と電力の単価によって決まります。この電力の単価のことを売電価格（買取価格・売電単価）と呼びます。

売電価格は1kWh（キロワットアワー）ごとに決められており、2019年度の売電価格は「14円／kWh（税別）」となっています。

太陽光発電の売電価格の推移

実は太陽光発電の売電価格は、毎年同じわけではありません。「毎年変わる」というと語弊があるのですが、太陽光発電の売電価格は

※10kW以上の産業用太陽光発電の場合

という取り決めになっています。
そして、10kW以上の産業用太陽光発電の売電価格は、2012年の固定価格買取制度のスタート時から年々下がり続けています。

産業用太陽光発電の売電価格の推移

※10kW以上2,000kW未満の場合です。
※価格は税別です。

売電価格が年々下がっている理由

上記のとおり、産業用太陽光発電の売電がスタートした2012年度から、今年度である2019年度までに、実に26円も値下がりしています。

ここでは、売電価格が値下がりしている理由について解説します。

太陽光発電が十分普及した

まず、太陽光発電が十分に普及したことが挙げられます。この売電制度は「固定価格買取制度(FIT制度)」という法律のもとで実施されており、この法律は太陽光発電などの再生可能エネルギーを普及させるために施行されたものでした。

調査会社である富士経済がまとめた「2018年版住宅エネルギー・サービス・関連機器エリア別普及予測調査」によると、2018年度時点での太陽光発電システムを設置している国内の住宅（国内普及率）は6.0%の見込みで、戸数にすると322万戸となります。

こういった結果を踏まえて、太陽光発電は順調に普及していると判断され、売電価格も低下傾向にあるのです。

設置費用が安くなった

太陽光発電の売電価格が低下しているもう一つの理由として、太陽光発電システムの設置費用が低下していることも関係しています。

太陽光発電の売電価格は「調達価格等算定委員会」という組織が決めており、この組織は太陽光発電の設置費用を見ながら、「設置を行っても損をしないかどうか」をしっかりと試算したうえで売電価格を決定しています。

そのため、太陽光発電の設置費用が安くなる分、「売電価格は下げても問題がない」ということになり、結果として売電価格が毎年下がり続けているのです。

設置費用が低下している理由について詳しくは、次の項目でご紹介していきます。

下がり続ける太陽光発電の設置費用

ここでは、太陽光発電の設置費用が下がり続けている理由や、太陽光パネルの性能アップ、2018年度と2019年度の設置費用の比較などを行っていきます。

設置費用は年々下がっている

太陽光発電で下がっているのは、売電価格ではありません。先程お伝えしましたが、実は最初の設置にかかる費用も、毎年下がり続けているのです。

太陽光発電の設置費用の低下には、太陽光発電が普及したことによる「部品の価格低下」や、施工業者の技術力が上がったことによる「低コスト化」などが要因として挙げられます。

部品の価格低下

先程もお伝えしたとおり、太陽光発電は今や日本の全住宅の6.0%、322万戸に普及するまでになりました。また、産業用太陽光発電の数も、2012年頃に比べて何倍にもなっています。

経済産業省エネルギー庁が発表した「2018年度エネルギー白書」によると、2016年時点での日本全体の電源のうち、太陽光発電を含む再生可能エネルギーは6.9%にのぼっています。

こうした太陽光発電の普及によって、太陽光パネルなどの部品の価格が低下し、設置費用の低下に繋がっていると分析できます。

施工技術の向上

太陽光発電の普及にともない、太陽光発電の設置を行っている業者にもノウハウが蓄積し、より効率的な設置を行えるように進歩してきました。その結果、太陽光発電の普及がはじまった頃に比べると、大幅なコストダウンに成功しています。

太陽光パネルの性能は年々上がっている（発電量が増えている）

太陽光パネルの価格は年々下がっているにも関わらず、実は太陽光パネルの発電効率は年々上がっています。発電効率とは、太陽エネルギーをどれだけ電気エネルギーに変換できるかを表した数値で、日射量（太陽光の量）や設置角度などが同じ条件の場所に設置した場合、変換効率が高いパネルのほうがより多くの電気を発電することができます。

具体的には、太陽光パネルの開発が始まった1980年頃と2015年頃のセル変換効率を比べると、単結晶パネルで実に10%程度も上昇（15%程度→25%程度）しています。多結晶パネルやCISパネルといったその他の素材に関しても、同様に発電効率は上昇しています。

つまり、毎年設置費用は下がっているのに発電量は上昇しているわけですから、「売電価格が下がっている」といっても、十分に投資として利益を確保するチャンスはあるということになります。

なお、太陽光パネルの発電効率（変換効率）について詳しくは、以下の記事もあわせてご参照ください。

2018年度と2019年度の設置費用を比較

2018年と2019年の産業用太陽光発電の設置費用ですが、以下のようになっています。

産業用太陽光発電（システム容量10kW以上）の費用相場

• 2018年度：30.0万円/kW
• 2019年度：28.6万円/kW

※経産省「平成30／31年度以降の調達価格等に関する意見（案）」参照

このように、2018年度から比べて、2019年度の設置費用は「1.4万円/kW」安くなっていることが分かります。ただし、こちらは10kW以上全体の価格の統計値になりますので、実際の流通価格は税別20万円を切る店舗も存在します。

太陽光発電投資で儲かるケース

ここでは、太陽光発電投資で儲かるケースについて、具体的にご紹介していきます。

利回り11%以上の太陽光発電投資

太陽光発電投資には、「想定表面利回り」と「実質利回り」の2種類が存在します。

• 想定表面利回り＝年間売電収入÷初期費用×100
• 実質利回り＝（年間売電収入-年間支出）÷初期費用×100

ここで重要なのは、「想定表面利回り」は年間支出（ランニングコスト）が考慮されておらず、「実質利回り」のほうがより正確である点です。また、「想定表面利回り」は、店舗によって初期費用に必要な経費（フェンス費用など）を含めずに算出し、表面上は高利回りになるようにしている場合もあるので注意が必要です。

これから始める投資型太陽光発電

実をいうと、２０２０年度以降は産業用太陽光発電の固定価格買取制度は終了する見込みです。厳密に言えば、今後は競争入札制度によって買取価格を決定する仕組みによって、固定価格ではなくより安い売電価格を提示した案件から優先的に買取を行うというものになるという意見があります。この入札制度においては個人事業主に人気がある50kW未満の低圧太陽光発電では収益が見込めません。

では、これから投資型の太陽光発電を行いたい場合、どうすればいいのでしょうか？

まずは新規で土地付き太陽光発電を行うことをお勧めします。土地付き太陽光発電は今最も注目を集めている投資の１つです。土地付き太陽光発電とは固定価格買取制度の権利を持った土地を投資家が賃借、もしくは購入する前提で大規模な産業用太陽光発電システムを設置して販売しているものです。

• 自己所有の土地が無くても太陽光発電を始められる
• アパートのような空室リスクが無く、投資経験が無くても安定して高収益を得ることができる
• 節税制度が使える

また、土地付き太陽光発電には中古の物件もあります。中古の土地付き太陽光発電投資とは、すでに稼働している太陽光発電を、土地ごと購入・賃借する方法です。

中古の土地付き太陽光発電投資のメリットには、以下が挙げられます。

• 既に稼働しているため、実際にいくら売電収入があるか分かりやすい
• 残りの売電期間と購入費用から、正確にいくら儲かるかを算出しやすい
• 既に稼働しているため、購入後すぐに利益を生み出せる
• 物件によっては、過去の売電価格が高かった頃に設置された太陽光発電もあるため、高額な売電収入が期待できる

よりスピーディな太陽光発電投資を行いたい場合や、確実に利益を出したい場合は、中古の土地付き太陽光発電投資もオススメです。

表面利回り11%でいくら儲かるかシミュレーション！

ここでは、初期費用を1,000万円と仮定し、表面利回りが11%だった場合にいくら利益がでるのかをシミュレーションしていきたいと思います。

シミュレーション条件

• システム容量：70kW
• 初期費用：1,000万円
• 年間発電量：78,571kWh
• 売電価格：14円／kWh
• 売電期間：20年間
• 年間売電収入：約110万円
• 表面利回り：11%

20年間で約1,200万円の儲け！

上記の条件で太陽光発電投資を行った場合、

• 20年間の売電収入：約2,200万円
• 20年間トータルの利益：1,200万円（2,200万円－1,000万円）

となります。

ただし、実際にはメンテナンス費用などが必要となるため、上記よりも利益は少なくなるケースが多いでしょう。

しかしながら、利回り11%の物件であれば、低リスクで初期費用の倍以上の利益が得られるため、投資する価値は大いにあると言えます。

※上記はあくまでもシミュレーションです。実際の初期費用や設置条件、利回りなどにより、最終的な利益は異なります。

太陽光発電が儲からなくなるリスクとは

ここでは、産業用太陽光発電のリスクなどについて解説していきます。

ずさんな運用によって投資効果が薄れる

初心者でも始められる土地付き太陽光発電ですが、２０年間安定した収益を得るためにはメンテナンスも必要です。遠隔モニター等で発電状況を確認、発電量の低下が確認された場合はその原因を調べて対処しなければなりません。

災害などによる太陽光パネルの破損

近年増えている台風などの災害によって、太陽光パネルが飛ばされたり水没したりするリスクが高まっています。太陽光パネルが破損してしまうと、発電が行えなくなってしまうため、予定していた売電収入を得ることが出来なくなってしまいます。

こうしたリスクに対応するために「火災保険」や「動産保険」に加入しておく必要があるでしょう。

投資として考える太陽光発電のメリット

ここでは、投資として考えた場合の、太陽光発電投資のメリットをご紹介していきます。

不動産投資などと比べてローリスク

マンション経営などの不動産投資は、空室率を埋めなくてはいけないため、宣伝費用や管理費など維持費が高額になる傾向にあります。また、基本的に都会でなければ部屋を埋められないため、良い物件は競争率が高くなります。

それに比べて太陽光発電投資であれば、空室率などは気にする必要がありません。また、太陽光が当たればどこにでも設置できるため、田舎の余っている土地を有効活用できるというメリットも存在します。

このように、太陽光発電投資は不動産投資や株投資に比べてローリスクであることがメリットとして挙げられます。

都道府県によっては補助金を活用できる場合も

都道府県によっては、現在も太陽光発電に対して補助金を交付している場合もあります。ただし、発電した電気を売電ではなく自社ビルや工場などに使用する「自家消費型太陽光発電」が交付条件になっている場合も多いため、必ず確認が必要になります。

まとめ

この記事では、2019年度の太陽光発電投資が儲かるかどうかについて解説してきました。

利回り次第ですが、案件によっては初期費用の倍以上は利益を得ることができるでしょう。

その理由は、売電価格の低下というデメリットはあるものの、同時に設置費用も下がっていたり、太陽光パネルの性能が上がって発電量が増えていたりすることが挙げられます。

また、より確実で早い太陽光発電投資をお望みの場合は、土地付き太陽光発電投資を検討してみるのも良いかもしれません。

不動産投資などと比べて低リスクの太陽光発電投資ですが、2020年度以降は10kW以上の産業用太陽光発電における固定価格買取制度（FIT制度）の廃止が検討されており、2019年度がラストチャンスかもしれませんので、気になっている方はお早めの設置を検討するのがオススメです。